20th Anniversary LATE BLOOMER SERIES 06 LOSTMAN GO TO BUDOKAN@日本武道館(9/16)
2009年9月16日水曜日。天気は晴れ。照り付ける日光は残暑を、流れる風の涼しさには初秋を感じる。
そんなごくごく普通の1日が終わろうとしている夕方。
特別な「いい夜」がはじまろうとしているのを感じていた。
場所は東京・日本武道館。
今日ここでライヴをするのは、the pillows。
この日、結成20年目を迎えた。
上京する時は公共交通機関を利用するのが楽なんだけれど、今日は車を走らせた。特別な夜に向かう時間を、大音量で音楽を聴きながら過ごしたかった。でもピロウズの代表的な曲を聴き始めたらなんだかそわそわしちゃって運転が危なくなり(笑)、第1期&第2期の曲を聴いてきた。KILLING FIELDかっこいい。
200km以上の距離が短く感じた移動時間。13時頃出発して、到着したのは17時半頃。東名と首都高渋谷3号線はやっぱ泣けるほど渋滞する。嫌気がして下道に下りたら迷子に。なので予定より1時間余分にかかった。やっぱ都心は車移動すべきじゃないかも(笑)。
うろうろしてようやく見つけた北の丸入口から武道館へ。500円払って車を停める。武道館を囲むたくさんのBUSTERS。物販は数百メートルにわたる長蛇の列を成していた。
ピロウズのことが好きなひとたちをいっぺんにこんなにたくさん、見たことがない。その光景だけで涙が出そうだった(早い)。
感動で若干うるうるしながら物販に並び始めたのだけれど、どー考えても19時のライブ開始に間に合いそうでないので途中離脱。しっかしすっっっごい列だった。Fesで見る横山健さんとかホルモンとかELLEGARDENとか9mmとか物販の列の何十倍もあったよ。今でもあれがピロウズの物販に並ぶひとたちの列だったって信じがたい(笑)。
長野からやってきた友人らと無事合流、入口を迷いながら入場。時間は19時少し前。
入って前方に目を向けると、白の薄いカーテン状のスクリーンがステージ前に懸っている。Wake up!Tourを思い出す。指定されたA-1ブロックへ入る。お友達がもらったフライヤーに次のツアー日程がアナウンスされているのをみるが、それどころじゃないほど気分はそぞろ。
武道館のアリーナ、やっぱ思っているほどに広くないし、Zeppみたいに詰め込めないので(消防法規定が厳しいそうです、友人談)、余裕があって見やすく快適。床はやはり緑シートで覆われてました。
19:05頃、ついに暗転。記念すべき夜が始まった。
いつものKelly's Duckが流れて、幕の後ろにメンバー登場。歓声が止むと効果音とともにスクリーンに映像が流れる。3つの剣が1本ずつ重なってピロウズのロゴマークが作られていく動画が投影されている。見入っていると突然‘バーン!!!’という音とともに発火し、幕が落ちる!火薬演出キタコレ(笑)。祭りっぽい。NANO-MUGENみたいだった。
ごくわずかな静寂の後流れ始めた1曲目のイントロ、それはドラムでもギターでもベースでもない、電子音だった。「Thank you,my twilight」!! 何かのインタビューで「ピロウズの20周年記念日の一言目には、俺はこれを言いたかったんだ。という曲を1曲目に演る」と事前にさわおさんが言っていたようで、私はスワンキーストリートだと思っていたが、予想外。
そして私が初めてピロウズのワンマンをみた2006年・冬の名古屋でのライブ、この曲が1曲目だった。そんなことも思い出しながら、聴く。
続いてリードのベース音が鳴り響く「MY FOOT」、イントロのカウントをみんなで叫べる「No Surrender」。自身の中のルーレットはこれからも回り続けるんだと宣言し、その行く先-道なき道-を進むと決意するように唄い、そして降伏はせん!と唄う。あぁ、ピロウズの曲ってほんとうにいい曲ばっかりだ。なんでこんなにいい曲ばっかりかけるんだろうなー。ノーサレンダーで「生き延びてまた会おう!」って言いきるように唄ってた。
そして。山中さわおが一節のギターを弾き、ピンスポットライトが当たり、唄いはじめる。「今日は新しい僕の誕生日なんだ 記念写真を撮りなおすからおいでよ」「素敵な思い出を作るろうそくは 消さないで 生まれ変わる朝が来た」。ピロウズの転機となった上田ケンジの脱退、その時に作られた(確か)この曲。代表曲のひとつなんだけれどめったにライブで演らないこの曲。アナモニを聴き込んでいた頃の自分の思いとかもレビューしてきて、胸がいっぱいになりながら立ち尽くしてた。
いつも通り、位置関係はすっかり忘れてますがMCメモ。さわおさんのひとこと目。「今朝 目を覚ましたら、20年経ってました!目を覚ましたんだが、まだ夢の中です。」このMCを聴いて、笑ったり泣きそうになったりニヤニヤしたりしたのは私だけじゃないだろう。一見ただの挨拶。でも仕掛けがあって。5年前に渋谷AXで開催された15th Anniversaryライブ。冒頭にさわおさんが言った言葉は、今日とまったく同じもの。私はDVDからしかそのライブの様子を見ることができなかったが、フラッシュバックした。してやられた。くそー。
ステージセットについて書いとく。佐藤シンイチロウの後ろに真っ白で巨大な液晶ヴィジョン。4分割されてて、全面にひとつの映像が流れたり、1/2面でさわおさん+Peeちゃんとか、しんちゃん+淳さん、とかのライブ生中継映像が出たり、ほかにもいろいろ。あんなでっかいヴィジョンでPeeちゃんのギターを奏でる手元が見られるとは、もう感動しきり。
5月のテナーのライブの時はプロジェクターからの投影映像だった。今回は巨大な液晶ビジョン。さすが916アニバーサリー、豪華。
ドードー、プロポーズ。プロポーズかなり久々に聴いた。ラフに表現したバンドソングを経てはじまったのはスケアクロウ。後ろのビジョンにはスケアクロウのPVが流れ・・・てない。スケアクロウのPVに似てるけど違う、新たに撮り直したであろうイメージ映像。影絵の樹木がLATE BLOOMERのロゴマークのアレだったことと、さわおさんの頭の陰影がもじゃもじゃパーマ頭だったので気がついた。夕暮れをパステルカラーで表現した美しい映像。「神様より君を信じる」と言い切れる、バンドメンバーへの信頼。涙がこぼれた。
余韻に浸る暇もなくニューアニマル。テンションが付いていけない。でもニューアニマルいい曲。人生の岐路に立ってたとき、この曲聴いて「よし、こっちの人生を選ぼう」と決めたころにリリースされたこの曲に、私は何回勇気づけられただろうか。「触れたらなくなりそうな夢を見て それでも手を伸ばし続けている」「審査員は自分自身のほかに誰もいらない」。
「こんな日なので、昔の、懐かしい曲も演ろうと思う。すごく久々に唄います。あの頃は、今とは少し違う、ビートルズみたいな曲をつくっていた。今日の、この日を夢見て、かいていたんだと思う。90'S MY LIFE。」というMCの後にはじまった90'S MY LIFE。いろんなキャンペーンとか20thブログとかでしつこく出てきただけに(ネタバレじゃん!と思って多少微妙な気分にはなったが)、初めてライブで聴くだけに、新譜のように聴いていた。昔の唄も色褪せないのがピロウズマジック。
曲が終わると間髪入れずにはじまったのは「ぼくはかけら」。アルバム‘ペナルティライフ'のシークレット・トラックとして収録されている。ペナに入っているのは再録で、オリジナルバージョンはアルバム‘90'S MY LIFE'に収録されている(アムバムの2曲目。1曲目は巴里の女性マリー)。色褪せないどころか、もっかい命を吹き込まれて、輝く楽曲。中盤の、唄うような真鍋吉明のギターも秀逸。
ずっとずっとずっとライブで聴きたかった「ぼくはかけら」。ようやく聴くことができた。
青い芥子の花が風に揺れる映像が流れたワンライフ。「Please cach this my song」という字幕が楽曲の進行と完全にリンクした演出に見入った1989。今回の916 Anniversaryライブ、この映像演出がとても良かった。1曲1曲に色んな映像が仕込まれてて、手間暇かけているのが伝わった。ツアーじゃないから、ほんとに1夜限りのスペシャル。夢なら醒めないでほしい。
「1989」の余韻に浸る間もなく「サリバンになりたい」。余韻に浸りたかった…。
‘君たちにラブソングを’→レディバードガール。ファニーバニー、「君の夢がかなうのは誰かのおかげじゃないぜ 風の強い日を選んで走ってきた」の部分をオーディエンスに振られ大合唱。ふと場内をみると、3F席の隅までBUSTERSで埋め尽くされてた。壮観。ステージからこの風景をみたメンバーの心情を思い、メンバー紹介の時のPeeちゃんのうわずった声を聞き、また涙が出た。
ピロウズが評価されるとき、長い活動歴と山中さわおのソング・ライティング能力についてが表立っていることが多い。もちろんそれはそうで揺るぎ無い。でもさわおさんが曲をかき続けてこられたのは、佐藤シンイチロウがドラムで、ギターが真鍋吉明で、‘10年一緒にやってきた'サポートベースが鈴木淳で、このひとたちがピロウズだからなんだ。だれひとり欠けては成り立たなかった。
それをバンドもオーディエンスもよく理解していて、バンドソングもオーディエンスソングもたくさん唄われている。
こんな風にすごしてきたバンドに、心惹かれないはずがない。
アイノーユーを経て、照明が穏やかにステージを照らす。「僕の中の小さな宇宙は、まだ、少しずつ、少しずつ、拡がり続けている。その宇宙に時折射す光が、きみたちだったんだ。」 BUSTERSへ最大の賛美をしめすさわおさん。そして「ストレンジカメレオン」。ステージが涙で曇ってみえなくなったよ。
ストカメ後、みたび余韻に浸る間もなく「サードアイ」。そして毎回毎回BUSTERSを‘連れてってやるぜ’といざなって曲がはじまっていた「この世の果てまで」。今日は違った。
さ「僕たちは天才ですから、CDを出せば売れるのが当たり前。ライブをすればひとが来るのは当たり前。…・・・・・・そんな風に、思うわけがないだろ!!! ありがとう!!!」と言い、「連れていってくれよ、この世の果てまで」と言い、曲に入った。
バンドの先頭に立って孤高な後ろ姿で旗を振り続けてきたさわおさんが、‘連れてってくれよ’といった。気持ちがあたたかくなった。
言い間違いでないことを願う(笑)。
彼がオーディエンスに感謝を述べた場面はこのライブ中、多々あった。あの、あまのじゃくでつよがりのさわおさんがストレートに感謝を口にする、その後の湧き上がるような歓声と鳴りやまない拍手を見て、ステージ上で涙を浮かべる。その光景をゆったりと見守るメンバー。いい夜じゃないか。
「その未来は今」を経て、20周年アニバーサリーのリード曲的存在の曲「雨上がりに見た幻」から「ハイブリッドレインボウ」。‘雨上がりに見た幻=異種混合の虹(ハイブリッドレインボウ)’を今も覚えている。ほとんど沈んでるみたいな無人島で、それでも明日を持っている。ヴィジョンに展開された映像もよくて、その世界観にどっぷり浸った。そうしたらハイブリのオーラスで場内の客電がいっぺんに点く。‘Can you feel that hybrid rainbow?’合唱し、拳をあげるオーディエンス。その数1万人以上。スタンディングエリアからみてもすごい画でした。上からみたかった、あの瞬間だけは。体がふたつほしかった。
アンコールを呼ぶ拍手のグルーブ感がすごくてまた感動し、待っている時間が一瞬で終わった気がした。ピロウズが登場して、楽器を持ち、「今日は盛大な誕生日会をありがとう」と言い、流れるような空の映像が映される。聴いたことのないインストが数小節分展開され、一瞬の休符を経て武道館に響いたギター音。ついに待ち望んでいた「Please Mr.Lostman」がはじまった。
5年前の916のDVDを見倒していた頃から、そのDVDの1曲目を飾るこの曲を、どうしてもどうしてもライヴで聴きたかった。あれから3年、ようやく願いが叶った。ずいぶん待ったよ、待っていてよかったよ。
そして「Swanky Street」。脳内は真っ白で、もう何も考えられなかった。ただ目の前で演られる、焦がれてきた曲たちに目を、耳を傾けるだけしかできなかった。
「今度はもっと小さいところでやろう」と言ってステージを去る。秋冬ツアーへの布石だろうか。
ダブルアンコール、再登場しノーMCでギターを縦に掲げる。ニヤけてしまった。「カルヴェロ」だ。そして「Ride on shooting star」。ダブルアンコールは聴かせる、でなく、遊び要素満載。眼鏡の中で共同偏視になるアニメーションが可愛かった。そしてピロウズ最大のオーディエンスソング、「LITTLE BUSTERS」。
ひそかに後ろのヴィジョンが真ん中からがっぱーって開いて、巨大なバスター君人形(2年前のツアーの使いまわし・笑)出てくんじゃないかな―と思ってたが、妄想でした。ちっ。(笑)
暗転する場内に「雨上がりに見た幻」のSEがかかる。唄うBUSTERS。今年はイベントと対バンツアーだけだったから、この感覚が久しぶりでニヤける。そして拍手でトリプルアンコールを求めること数分、ピロウズ登場。さすがに疲労の色が隠せない感じだった。
はじまった曲は「POISON ROCK'N'ROLL」。‘長い活動歴のあるバンドの、新しい曲が素晴らしいってすごいことだ’という言葉と、2年くらい前の新宿LOFTでこの曲を初めて聴いたときのことを思い出す。
最後を毒づいて終わるAnniversary ライブ。なんてピロウズらしいんだろうか。
終演は21:30頃。たっぷり2時間半の記念すべきライブ。MC少なめ、新旧の代表的楽曲が網羅された、その看板にふさわしい感動的な内容と思った。でも私はきっと、どんな内容でもそう感じたに違いない。それは今夜この武道館で起きた奇跡に、言い表せないくらいの感謝をしているから。
人生の中で、自分の意思で動き、笑い、泣くことができる時間。行きたいときに行きたい場所に行けて、感動できる時間。たくさんあるように感じても、実はそう長くないのかもしれないと思う。それは学業や仕事による制約があったり、家庭があったり、自分の身体状況がそうではなかったりして、だ。
その条件が叶っても、バンドが健康的な状態でライブできる時間も、実はそう長くないとも思う。演る側だって人間だ。クリエイティブな活動の中で、意見の相違から揉めるこのもあるだろう。それに、時間がたてばバンドマンだって歳をとるし、怪我もすれば病気もする。今年は何人ものロックスターが、天に昇ってしまった。
だからこそ、ピロウズはそういう意味でも、ほんとうに稀有な存在のバンドだ。
自分が音楽を好きだと自覚できるこころの状態で居られる。
焦がれた楽曲を聴くために会場へ足を運べる。
良い健康状態のバンドのライブを見れる。
しかもそのライブは20周年という記念すべきもの。
これは奇跡だ。おおげさなんかじゃない、ほんとうに奇跡だ。
私が歌詞の内容を見て共感しながら感動するという、初めての体験をした「IMAGINE」。その美しい唄声に心を奪われた「Yesterday Once More」。
その唄う姿を実際に見たくても、John LennonもKaren Carpenterも、この世の存在ではなかった。
この「特別」にいい夜になった2009年9月16日、演られた28曲の楽曲。あの時間を武道館で共有できたこと。涙があふれるほど感動したこと。ぜったいに忘れない。
そして私はまた、ライブハウスへ行く。かかとを鳴らして、異種混合の虹を感じながら。
the pillows@NIPPON-BUDOKAN SET LIST(09/09/16)
- Thank you,my twilight
- MY FOOT
- No Surrender
- アナザーモーニング
- Wake up!dodo
- プロポーズ
- スケアクロウ
- New Animal
- 90'S MY LIFE
- ぼくはかけら
- ONE LIFE
- 1989
- サリバンになりたい
- Ladybird Girl
- Funny Bunny
- I Know You
- ストレンジカメレオン
- サードアイ
- この世の果てまで
- その未来は今
- 雨上がりに見た幻
- ハイブリッドレインボウ
EN.
- Please Mr.Lostman
- Swanky Street
W.E.
- Calvero
- Ride on shooting star
- LITTLE BUSTERS
T.E.
- POISON ROCK'N'ROLL
オマケ:連れ帰ってきたバスターくんストラップ(大人買い★)と、グッズ買ったら&DVD買ったらもらったステッカー
ステッカーのために持ってなかったプレデタDVD買いました…思う壺ー(avex移籍後のにしか付かないっていうからー)